別紙

「情報通信新時代のビジネスモデルと競争環境整備の在り方に関する研究会」
最終報告草案に関する意見
〜コンテンツ&アプリケーションレイヤー(情報サービス事業)明確化の必要性〜

1. はじめに
  今回、ブロードバンド化の進展を見据えて、新たなビジネスモデルの登場を促す公正競争環境の整備について、レイヤーに着目した検証と考え方が示されたことは大変有意義であると考えます。また、当報告書作成にご尽力されたご関係者各位に敬意を表するとともに意見提出の機会を得ましたことに感謝申し上げます。
 
2. 最終報告草案の方向性に関する意見
  移動体通信サービス分野において、初期段階での市場開拓から急成長をしていく過程において垂直統合型のビジネスモデルは、ユーザーに取引の安心を提供する事によるブランド価値の向上が市場拡大を進めたという面で大きな意義があったと考える。
しかしながら、成熟段階へとすすんできた状況においては新規の多様なビジネスモデルを醸成して新しい成長を目指すという点において様々な不具合が発生してきているのは正直なところである。
このような状況において新たな競争環境整備の在り方として、各レイヤーのアンバンドル化が示されたことは、公正競争環境が新たなビジネスモデル醸成のバックグラウンドになるという面で正しい方向性であると考える。
 
3. アンバンドル化に伴うコンテンツ&アプリケーションレイヤー(情報サービス事業)明確化の必要性について
  今までは、コンテンツ&アプリケーションレイヤー(情報サービス事業)は通信サービスの一部として定義されてきたが、今後、アンバンドル化によって情報サービス事業を独立した産業として公正競争環境下で育成して行くためには定義の明確化と市場を育成するための独自の方策が必要となる。
なぜならば、既存の商取引に関する制度は、有体物の取引を前提としたものが多く、以下のような特徴をもつ通信ネットワークを前提とした情報サービス事業にはなじまない点が多い。 また、このような規制が適用された場合、かえって市場の発展を阻害する要因になる可能性がある。
 
  情報サービス事業の特徴
1. ある一定期間継続的に情報サービスを提供する形態が多く、取引に影響する要因で既存取引との差異が大きい。
2. 取引する対象がデジタルコンテンツであるのが一般的であり、瑕疵等問題が発生した場合でも代替物の提供で解決できる可能性が高い。
3. 通信ネットワークにより瞬時に不特定多数のユーザーを対象とすることができるため問題が拡大する可能性がある。
 
 

また、当報告書でも競争環境が整備されることでユーザー保護の重要性が示されているが、まさしくレイヤーのアンバンドル化によって独立した産業となるコンテンツ&アプリケーションレイヤー(情報サービス事業)において早急に取り組むべきテーマであると考える。
その場合、有体物を前提とした既存の法制度により過度な規制が加わることは望ましくない。(一例を示すと、デジタルコンテンツであっても商法の規定により債務不履行責任が適用された場合、5年間担保責任を問われる可能性があるという考えがある。)
よって方向性として、ユーザーと業界がある一定の品質を相互に確認することで新規の情報サービスでも安心して利用できるような自主的な業界ガイドラインを整備することを目指すべきであり、行政としてはそのような業界の動きをバックアップする意思を明確に示すべきである。
但し、検討段階で、自主的なガイドラインを担保するために必要とされる規制が明確な場合には法制面を整備することも積極的に進めるべきである。

結論として、コンテンツ&アプリケーションレイヤー(情報サービス事業)の発展を促進するためには、各レイヤーのアンバンドル化の進展と平行して、今まで通信サービスと一体として扱われていた情報サービス事業について明確な定義を与えるとともに、健全な発展を促進するために業界ガイドライン策定におけるサポートを主とする行政としての方向性も明確に示すべきであると考える。