別紙3

モバイルコンテンツ料金モデルの課題と具体的な施策の可能性

【意見要旨】

  • より良質なモバイルコンテンツを提供していくには、モバイルコンテンツ業界全体のレベニュー拡大が必要である。モバイルコンテンツ料金(通信料金+情報料金)をユーザーに課金するモデルだけでは、大きな成長は見込めない。
  • ユーザー課金を中心とした現在のビジネスモデルから、今後、柔軟な課金を通じて課金対象を区別するような新しいビジネスモデルの創造が必要である。同時にモバイルコンテンツ料金のレベニューシェアについても通信料金のキックバック等を通じて増大するコストを吸収できるような最適解を検討すべきである。
  • モバイルコンテンツビジネスを拡大していくシステムとしては、ネットワーク及び端末のインテリジェント化が解決策となりうる。

報告書でも指摘されておりますように、今後のモバイルビジネスの発展には「ユーザーのニーズに近いところにいるプレーヤの参画が活発に行われる市場が望まれています。」
そうした環境では、良質で多様なコンテンツの提供を担うコンテンツプロバイダーの活性化が益々必要な要件になると思われます。

しかしながら、コンテンツプロバイダーの現状はユーザーニーズやネットワーク及び端末の高度化に対応するために開発コストを始めとしたコスト増大により確実にビジネス環境は厳しくなってきております。
また、モバイルコンテンツ料金を負担しているユーザーも、他の消費支出を削って料金を支払うような状況にまできており、(図1:「おこづかいに占める通信料金の割合」参照)


図1:「おこづかいに占める通信料金の割合」
(x軸:月額のおこづかい、y軸:ユーザーの割合)
出展:MCFリサーチ分科会調査



図1:「おこづかいに占める通信料金の割合」
(x軸:月額のおこづかい、y軸:ユーザーの割合)
出展:MCFリサーチ分科会調査

今後は、ユーザーに課金するモデルだけではコンテンツコストを吸収できず、求められる高度なネットワーク及び端末に対応したコンテンツを提供できなくなるような状況が進み、モバイル業界全体の成長が鈍化していくことが危惧されます。
広告主や企業が通信料金を負担するような新たな課金モデルが求められているのではないかと思われます。

それでは、現状のユーザ課金によるモバイルコンテンツ料金の内訳を検証してみます。
モバイルコンテンツは基本的に通信ネットワークを利用して配信されるネットワーク型コンテンツであるため、ユーザーにとっては、パケットデータ通信料と情報料の合計がモバイルコンテンツ料金であるといえます。
(図2:「ユーザー一人あたりのモバイルコンテンツ料金(月額)の内訳」参照)



この内コンテンツプロバイダーのレベニューは、情報料の200円になります。
コンテンツを開発していくコストは、情報料収入により賄われており、今後、ユーザーにより良質なコンテンツを提供していくには、増大するコストにあわせてコンテンツプロバイダーのレベニューを拡大する事が求められます。

それには、2通りの方策が考えられます。

  1. コンテンツ毎にそれぞれ負担すべき対象に課金する事でモバイルコンテンツ料金のレベニュー拡大を実現する。
    (図3:「データ通信料の利用シーンによる内訳と料金を負担すべき対象のイメージ図」参照)
  2. 良質なコンテンツを提供できるようにモバイルコンテンツ料金のレベニューシェアを通信料金のキックバック等を通じて実現する


図3について、現状のデータ通信料はすべてユーザーが負担している(広告を閲覧する場合もデータ通信料が課金される。またビジネスに利用する場合、携帯電話の加入者は個人であることが多いため、明確に個人利用とビジネス利用が分けられずユーザーが通信料金を負担する場合が多い。よってASPサービスや企業内グループウェアの利用が進まない要因の一つになっている。)、上記のようにそれぞれの利用シーンに応じて負担すべき対象に課金する事で、コンテンツやサービスの利用が進むためモバイルコンテンツ業界全体のレベニューが増大する事が考えられます。

また、柔軟な課金を実現するインテリジェント化によりサイト毎やコンテンツ毎のデータ通信料が把握できれば、通信料に応じたコンテンツプロバイダーへのキックバックや通信料金込みでのコンテンツ料金の設定が可能となります。(大容量な音楽コンテンツ等の通信料金を一曲毎に設定できる。これは、コンテンツによってビット単価を増減させる事を意味します。)

つまり、モバイルにおいてマルチメディアコンテンツビジネスを実現するためには、ユーザーがベネフィットを感じるような柔軟な課金を実現する事が求められています。
データ量=通信料金から、コンテンツのベネフィット=通信料金への転換が必要です。

現在のネットワークでの課金システムは、送受信されるデータ量に応じてすべてユーザーに課金されています。よって、好きなサイトを閲覧した場合でもスパムメールが配信された場合でも同様にデータ量に応じて課金されます。

【柔軟な課金を実現するインテリジェント化に求められる要件とは】
● いずれかのレイヤーにおいて、送信元と送信先を特定してデータ通信量をカウントする。
● データ量のカウントを課金対象情報とマッチングして課金する。

それでは、より具体的にサービスイメージを検証してみます。
インテリジェント化のうち、現在の提供されているサービスの延長線上に考えられるものとしては、「スポンサー(フリー)サイト」が考えられます。
これは、情報提供者がデータ通信料金を負担する「メッセージフリー」のシステムを応用する事で一部実現が可能かと推察されます。
通話のサービスとして普及している「フリーダイアル(0120をダイヤル)」のサイトを利用したサービスとしてイメージされます。
「スポンサーサイト」とは事前に登録されているサイトからのデータ通信料を、携帯電話加入者以外のスポンサーサイト提供者に課金するサービスと定義できるかと思います。
ユーザー以外からの収入が見込めるため、モバイルコンテンツのレベニュー拡大が図られると考えられます。
具体的なサービスとしては以下にいくつか上げさせていただきます。

【スポンサーサイトの具体的なサービス例】
● ビジネス利用として、ASPサービスや社内グループウェアでの利用
(課金対象者は、情報提供企業、勤務先企業)
● ポータルサイトのインデックス等広告要素が強いトップページサイトでの利用
(課金対象者は、情報提供企業、ポータル提供企業)
● 広告やアンケートを始めインフォマーシャル的なサイトでの利用
  (課金対象者は、情報提供企業、ポータル提供企業)
● CRMを重視した会員制のモバイルコマースサイトでの利用
  (課金対象者は、情報提供企業、コマース運営企業)
● パブリック利用の災害通信、高齢者対応、車両運行、等での利用
(課金対象者は、国、地方自治体、情報提供企業)

【定額制の通信料金について】
インテリジェント化以外にも通信料金の定額制が実現できれば、同様な効果を実現できる可能性はあります。
しかし、限られた周波数帯域の中で、これから益々増加していくデータ通信量を効率よく処理する事が求められるモバイルインターネットにおいては、現在の平均的なデータ通信料金である月額2,000円の収入だけで定額制を導入する事は困難ではないかと想像します。
今言われているような5,000円を超えた定額通信料金では、メリットを享受できるユーザーは限られたものとなってしまいます。
定額通信料金がプレミアムサービスとなってしまっては、誰でも利用できるというモバイルインターネットのメリットが低減されてしまいます。

次世代携帯電話だけでは、通信速度、使用可能エリア、コスト等から、必ずしもすべてのユーザーニーズに応えることはできないと思います。
PHS、2G、3G等を含めてユーザーがTPOに応じて使い分けることができる環境を考慮すべきではないでしょうか。UIM、ブラウザ、SSL等のテクノロジは次世代携帯電話でなくても実現できます。
一台目の加入者契約が有ればあとは、どの方式でもTPOに合わせて使い分ける環境を実現できれば、ユーザーへ最適なベネフィットを提供できると思います。また、公共財産としての電波の有効利用にもつながるのではないでしょうか。  

今後、定額通信料金を含めて理想的なデータ通信環境が実現されるのを期待しております。

【まとめ】
次世代通信ネットワークを早急に整備していく事は、新しいベネフィットを世の中に提供するという意味で非常に重要なことであると考えます。
しかしながら、大きく変動しているモバイルビジネス環境の中で、参加しているプレイヤがWIN&WINの関係を維持しつつ発展していくための投資もまた重要ではないかと思っております。
今回、ご提案させていただきました課題と解決するための施策は、一つの可能性として考慮いただければ幸いです。
できましたら、今回の提案をきっかけとして、モバイルコンテンツ料金モデルに関する課題の整理と具体的な施策の検討が進む事を期待するものであります。